| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-055 (Poster presentation)

ヨシゴイIxobrychus sinensis ヒナの成長は本当に早いのか?

*大久保明香(弘前大院・農生), 田中太一(弘前大院・農生), 佐原雄二(弘前大・農生)

ヨシゴイは日本で見られるサギ類の中では最小の種であり、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。抽水植物帯の中で隠蔽的な生活を送り、bittern postureという擬態行動を行うことや、単独で抽水植物帯に営巣するという特徴が本種を調査する上での妨げとなり、研究例は非常に少ない。Kushlan and Hancock(2005)は、ヒナの成長が速いことがヨシゴイの特徴であると述べているが、その明確な根拠は示されていない。

本研究では、「巣立ち」に注目してヨシゴイヒナの成長のはやさについて検討した。調査は2013年6~8月、青森県弘前市と青森市にある溜池で発見した計5巣において、各巣内の第1子が巣立つまで毎日、ヒナの体重・嘴峰長・跗蹠長を計測し、得られたヒナのデータと他のサギ類のヒナの成長の比較を行った。比較対象としては、同属であるLittle Bitternの他、アマサギ、コサギ、ゴイサギ、アオサギを用いた。

その結果、本種は体重や嘴峰長よりも跗蹠長の方が速く成鳥のサイズに達することがわかった。他のサギ類と比較した結果、親の体重を1としたときに巣立ち時のヨシゴイヒナは相対的に他のサギ類よりも体重が軽く、跗蹠長に関してはLittle Bitternやコサギより本種の方が相対的に小さかった。これらの結果は各々の生態と営巣環境とに関連していると考えられる。比較した他の4種のサギ類がコロニー性で樹上に営巣するのに対し、ヨシゴイとLittle Bitternは単独で抽水植物帯に営巣する。また、ヨシゴイは成鳥も抽水植物帯の中を歩き回る生活をしているため、このような特殊な環境に早く適応するために巣立ちが早いと考えられる。他のサギ類より相対的に小さな体で巣立つことは機能的な成長が早いことも示唆している。


日本生態学会