| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-060 (Poster presentation)

メナガオサガニハサミエボシの矮雄と性システム

*澤田紘太(総研大・先導研), 吉田隆太(琉球大・理), 山口幸(神奈川大・工), 安田恵子, 遊佐陽一(奈良女子大・理)

フジツボ類には雌雄同体、雌雄同体と雄の共存、雌雄異体の3種類の性システムが知られ、性の進化を研究するうえで優れた生物群である。フジツボ類の雄は非常に小さいため矮雄と呼ばれ、雌雄同体または雌の体表に付着して生活する。本研究では、沖縄県・藪地島の干潟で採集されたメナガオサガニ類に共生するフジツボの一種メナガオサガニハサミエボシOctolasmis unguisiformisの性表現を、組織切片の観察により調査した。この種では、他個体に付着する小型個体の存在が報告されているが、その性表現は明らかになっていない。そこで他個体上個体と、そうでない個体の性機能を調査したところ、他個体上個体は、そうでない個体に比べて小さなサイズで雄機能のみを発達させているが、雌機能はまったく見られなかったため、これらの個体は矮雄であることが確認できた。本種の宿主あたりの個体数は非常に少ないため、この結果は、集団サイズが小さいと矮雄が生じるという理論的予測と一致する。また矮雄以外の個体についても予備的な調査を行い、それらが形態的には雌雄同体であるものの、少なくとも一部の個体は雄機能をほとんど発達させていないことがわかった。このことは、本種が矮雄・機能的雌・雌雄同体の3種類の共存という、動物界では非常に稀な性システムを持つことを示唆している。このシステムが性配分理論によって説明できる可能性について議論する。


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