| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-071 (Poster presentation)

ゾウムシコガネコバチ雄の繁殖戦略

*笠松栄一,安部 淳(神奈川大・理・生物)

雄が生産する精子に比べ、雌が生産する卵は生産にかかるコストが大きいため、配偶子の利用に関しては、これまで雌側の繁殖戦略が中心に研究されてきた。しかし、精子生産にかかるコストは必然であり、雄が無限に精子を生産できるわけではないため、近年では雄の戦略的な精子配分行動が着目されている(Wedell et al. 2002など)。本研究では寄生バチの一種であるゾウムシコガネコバチ(Anisopteromalus calandrae)を対象とし、より多くの子を産むことのできる雌に対し、雄が交尾頻度や渡す精子量を調節するのかについて検証した。

どのような雌がより多くの子を産めるのかを明らかにするため、体長と日齢の異なる雌の子の数を調べた。寄主の大きさを変えることにより雌の体長を調節し、0日齢の若い雌と5日齢の老熟雌に、それぞれ十分な量の寄主を与えて産卵させた。その結果、雌の体長による差は見られなかったが、若い雌が老熟雌よりも有意に多くの子を産んでいることがわかった。次に、雌の質によって雄が渡す精子の量を調節しているかを調べるため、体長を調節した若い雌と老熟雌にそれぞれ交尾させ、その後受精嚢内の精子数をカウントした。しかし、これまでのところ、雄が雌の質によって渡す精子量を調節しているという結果は得られていない。今後は、交尾を行い残りの精子数が限られた雄を用いて同様な実験を行い、雄の状態も含めた精子分配戦略について考察する。


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