| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-078 (Poster presentation)

ヒライソガニの体色の地域間差異とその要因

*村上 由希子(奈良女子大院・生物科学), 和田恵次(奈良女子大・理)

本研究は体色の個体間変異が大きいヒライソガニGaetice depressus (De Haan, 1833)において、生息地の転石の色調が異なる地域間でみられる体色の相違とそれが生じる要因を明らかにすることを主な目的とした。転石の色調が濃色の地点では濃色系個体の割合が高く、転石の色調が薄色の地点では薄色系個体の割合が高く、この特徴は定着直後の稚ガニの段階においても認められた。濃色系個体と薄色系個体の生存率が濃色の地点と薄色の地点とで異なるかをtethering実験により検討したところ、両者の生存率はいずれの地点とも違いはみられなかった。さらに、特定個体の体色の時間的変化を野外と室内で追跡したところ、薄色系個体は時間に伴い濃色へ変化するが、濃色系個体は色調に変化はみられなかった。また濃色の背景のほうが薄色の背景よりも濃色へ変化することが明らかとなった。これらの結果から、地域間での体色の特徴の違いは、(1)定着直後の段階で背景色に応じた色彩変異をもつことに由来すること、(2)体色の違いによる生存率の地域間での違いによるものではないこと、(3)個体の成長に伴う濃色への色調変化が背景色の異なる地域間で異なることによるものであると理解できる。


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