| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-079 (Poster presentation)

栃木県日光足尾地域におけるニホンジカ個体群の遺伝構造

*杉田 あき(東京農工大学),瀬戸 隆之(東京農工大学),佐藤 俊幸(東京農工大学),小山 哲史(東京農工大学),梶 光一(東京農工大学))

本研究では栃木県日光地域および足尾地域で越冬するニホンジカについて、ミトコンドリアDNAのD-loop領域を用い遺伝構造の検討を行った。

2012年から2013年の冬季に日光および足尾地域において、個体数調整のために補殺された計66頭のニホンジカから腎臓を採取し、PCR法によりミトコンドリアDNAのD-loop領域を増幅し924bpの塩基配列を決定した。日光および足尾地域の越冬集団の遺伝的な分化の程度を明らかにするためにFstを算出した。また、各地域のニホンジカ越冬集団の遺伝的な多様性を明らかにするため、ハプロタイプ多様度(h)および塩基多様度(π)を算出した。更に、2つの越冬集団の遺伝的な特徴を明らかにするため、既存研究で明らかにされた他地域のニホンジカの塩基配列との比較および系統樹の作成を行った。

日光地域および足尾地域の越冬集団からは合計3つのハプロタイプが検出された。2つのハプロタイプはそれぞれの越冬集団に固有のものであり、残りの1つは2地域に共通して確認され、それぞれの地域で最も優占するハプロタイプであった。各地域の越冬集団の遺伝的多様性は低く、過去にボトルネックを経験したことや創始者効果を受けた可能性が考えられた。また、2つの越冬集団では有意な遺伝的分化が示され、2地域間の交流が制限されている可能性が示唆された。系統樹からは2つの越冬集団が他地域のニホンジカと異なるハプロタイプを持つこと、および、南関東のニホンジカと一部類似する塩基配列を有することが明らかにされた。これらの結果をもとに個体群の管理について考察を行う。


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