| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-148 (Poster presentation)

イヌワシ保全のための列状間伐地における伐採幅の違いがノウサギ誘引効果に及ぼす影響

*小林峻大,伊藤咲音,林田光祐(山形大・農)

イヌワシの採餌環境創出を目的とした列状間伐地において、主要な餌動物であるノウサギの利用が間伐後1年目には増加するが、その後低下することが知られている。そのため、経年的にノウサギ誘引効果の高い列状間伐を行う必要がある。本研究では、列状間伐の伐採幅に着目し、伐採幅の違いがノウサギ誘引効果にもたらす影響を明らかにすることを目的とした。

山形県鳥海山山麓で2010年秋に5m、7m、10m、15mの4つの伐採幅で列状間伐を行ったスギ人工林を調査地とした。各伐採幅に林縁からの距離が2mの場所に4㎡の方形区(以下、林縁区)を10個と保残列から伐採列を横断する2m幅の帯状区(以下、帯状区)を1本ずつ設置した。林縁区では間伐後3年間の木本の根元断面積合計とノウサギの食痕量を調べた。また、帯状区では木本の根元断面積合計と樹高を調べた。さらに、各伐採幅で自動撮影装置を設置し、ノウサギの出現頻度を比較した。

間伐後1年目にノウサギの出現頻度は約4回/30日と15m幅で最も多かったが、以降は大きく減少し、間伐後2・3年目は5m幅で多く観察された。林縁区で木本食痕量が最も多かった伐採幅は15m幅、5m幅、15m幅と経年的に変化した。この結果から間伐後1年目はノウサギの利用が15m幅で最も多いが、その後は狭い伐採幅にもノウサギの利用が増加することが推察された。また、7m幅では帯状区での各コドラートで上層を占める個体の樹高平均とクマイチゴやタラノキなどのギャップ依存種の割合が相対的に低かった。このことから、イヌワシの保全だけでなく伐採地の更新を考慮すると、林冠を構成する高木種の優占度が高い5~7m幅の列状間伐を行う価値は高い。今後は刈り払いなど間伐後の施業の効果を考慮し、最適な伐採幅を検討する必要がある。


日本生態学会