| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-155 (Poster presentation)

日本産ミズゴケ類の潜在分布域の推定

*久保晴盛(広島大・院・理・生物), 向井誠二,坪田博美(広島大・院・理・宮島)

植物の生理生態を理解し、分布の制限要因を推測する上で分布図の作成は有用であり、古くから多くの研究者によって研究が進められてきた。その中でも、Horikawa(1963)の提唱した三面法は標高の情報を組み合わせ、細かなメッシュに区切ることで潜在分布域の推定を試みた先駆的な研究であり、それ以降コケ植物を対象にした分布図も作成されてきた。また、コンピュータ技術が飛躍的な発展を遂げ、GIS(地理情報システム)の基礎情報が整備されたことに伴い、気象や地形、地質、植生などの多くの環境因子を一元的に取り扱い、解析できるようになった。その基盤を活用し、既存の分布データや標本情報を組み入れることで、過去の分布図による解析よりも高次元で詳細な解析が行うことができる。

本研究では、Suzuki(1971)によってまとめられた日本産ミズゴケ属植物のうち、三面分布図が作成された10種の産地情報に基づき、GISを用いた相関解析を行った。環境因子として、1㎞メッシュ精度の気候変数〔Bioclim(Hijmans 2006)、WI(暖かさの指数)、CI(寒さの指数)〕、地質、植生、標高、平均傾斜角度、河川密度を採用した。解析の結果、気候変数と地質が重要な因子として抽出された。また、Maximum Entropy Modeling(Maxent:最大エントロピーモデル)を用いて潜在分布域の予測を行い、分布モデルの評価を行った。

発表では、日本産ミズゴケ属植物の生育環境の特性および潜在分布域推定の有用性について議論を行う。


日本生態学会