| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-175 (Poster presentation)

自然林再生を目的とした緑化地における植生遷移

*堀田佳那,東若菜,南野拓也,石井弘明,黒田慶子(神戸大院・農)

自然林再生緑化では、しばしば周辺林分と生態的に連続した植生を造成することを目的として植栽が行われる。しかし、周辺林分が遷移途中の二次林である場合、現在の群落構造をもとに植栽樹種を選定して緑化を行うと、将来的に景観的連続性を実現できないことが予測される。本研究では、植栽後10年が経過した造成地において、植生調査を行い、周辺林分と連続した植生が造成されたかどうか評価した。

調査地は兵庫県神戸市にある、国営公園しあわせの森の北側法面である。しあわせの森は残存する周辺二次林との景観的・生態的連続性を目的として、平成15年に一斉植栽された。緑化地および隣接する二次林内で、緑化地の目標植生とされた林分にそれぞれプロットを設置し、植栽時のデータをもとに現存の植生と比較した。

現在の緑化地と目標林分の植生類似度(Jaccardの拡張式,Chao 2010)は、種構成・林分構造ともに低く、植生の連続性は実現できていないことが分かった。また目標林分では10年前と比べて、種構成は変化していないが、優占種が入れ替わりつつあることが示唆された。

自然林再生緑化においては種構成を目標林分と 一致させることは比較的容易であるが、遷移による林分構造の発達や優占種の変化まで一致させることは困難であることが示された。したがって、施工時に周辺林分の遷移の方向をある程度予測して植栽を行い、その後も群落構造の変化をモニタリングしながら継続的に管理する必要があると考えられる。


日本生態学会