| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-187 (Poster presentation)

山地渓流におけるイワナの摂食・代謝を通した放射性セシウム濃度の季節的変動

岡田健吾,岩本愛夢,境 優(農工大院・農),根岸淳二郎(北大院・地球環境),布川雅典(北大院・農),五味高志(農工大院・農)

福島原発事故によって放出された放射性セシウム(137Cs)のイワナへの蓄積とその季節変化を魚体内への摂取(餌資源・肥満度)及び体外への排出(代謝)から評価した。福島県二本松市(100~300kBq/m2・平成24年6月時点)と群馬県みどり市(30~60 kBq/m2・同)の山地渓流において、2012年8~2013年5月に季節毎4回について50mの流路区間を対象とし、イワナ及びその餌資源となる陸生と水生生物についてパントラップとドリフトネットで採取した。放射性核種はGe半導体検出器を用いて分析した。採取個体の体長は43~226mmであり、同程度の体長の個体でも肥満度には差がみられた。イワナ筋肉中の137Cs濃度(Bq/kg-dry)は福島で1191~6081、群馬で118~617であった。胃内容物は、夏期の陸生生物の割合は福島で79%、群馬で92%となっていた。冬期では、水生生物の割合が、福島で64%、群馬で100%となっていた。イワナの代謝率(W/g)は福島で0.9~4.1、群馬で0.7~6.7で、体長が大きいほど低く、水温が高い夏期ほど高くなる傾向が見られた。イワナの137Cs濃度に影響を与える要因を抽出した結果、両調査地で137Cs濃度と体長に正の相関が見られ、体長の増加に伴う代謝率の低下が137Csの排出に影響していると考えられた。また、福島では肥満度が高いほど137Cs濃度が高くなり、餌資源の摂取量が増加することで137Cs濃度が増加すると考えられた。群馬では春に137Cs濃度が低かったが、冬に高くなるといった季節変化が見られ、水温や生息環境の違いによる代謝率の違いや、餌資源の汚染度の違いがイワナの137Cs濃度に影響していると推測された。


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