| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-191 (Poster presentation)

水田に生物がいると水質とイネはどう変化するか~ドジョウ、タニシ、オタマジャクシが果たす役割~

*小山奈々(東大・農)・辻咲恵(龍谷大・理工)・一般財団法人池田町農業公社(福井県)・(株)ネイチャースケープ・丸山敦(龍谷大・ 理工)・岩井紀子(農工大)

近年、圃場整備や農薬等の影響で水田から生物が減少したと言われているが、生物が失われるとイネにはどのような影響があるのだろうか。生物は、泥を撹拌して雑草の発育を阻害したり、排泄物から水中に栄養塩を溶脱させたりすることで、イネに正の影響を与える可能性がある。本研究では、水田の生物であるドジョウ、マルタニシおよびシュレーゲルアオガエルのオタマジャクシが、水質の変化を介してイネにどのような影響を与えるのか、福井県今立郡池田町の水田16筆を使用して検証した。各水田には生物を1種類ずつ導入したエンクロージャ(区画)3つと生物を導入しないコントロール区画、計4つの区画を設置した。実験期間中の水質(濁度やリン酸濃度など)は、田面水の9項目を4回、土壌浸透水で7項目を実験開始時と終了時の2回、それぞれ測定した。イネは乾燥重量など5項目を実験開始時と終了時に測定した。その結果、イネの全測定項目において生物の影響は検出されなかった。ドジョウ区画では田面水の濁度はコントロール区画よりも有意に高く、リン酸濃度は有意に低かった。タニシ区画とオタマジャクシ区画では土壌浸透水のリン酸濃度がコントロール区画よりも有意に高かった。また、イネの成長量と濁度には負の相関が認められた。以上より、水田の生物はイネの成長には影響を与えないが、水質の変化を引き起こしていることが示された。水質への影響は生物の生態的特性と関係があり、土壌撹拌能力が低く、栄養塩を多く排出する生物ほどイネに正の影響を与えると考えられる。また、水質がイネの成長量を変化させる要因のひとつであることが示された。


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