| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-004 (Poster presentation)

葉緑体DNAを用いたシマクサギの系統解析

*水澤玲子(大阪自然史), 藤井伸二(人間環境大), 長谷川雅美(東邦大), 井鷺裕司(京大)

伊豆諸島に生息するシマクサギについて、その系統的な位置づけを明らかにするために系統解析を行った。過去30年ほどの間に分子系統解析の技術は急速に発展し、さまざまな分類群について系統関係の大幅な見直が行われたが、一方で島嶼生固有種のような局所的な種の中には、系統的な位置づけの未解明なものが多く残されている。

シマクサギは伊豆諸島および周辺本土のみに生息するクサギ属の1種である。シマクサギは広域分布種であるクサギに近縁とされるが、これまでにシマクサギの分子系統解析は行われてこなかった。クサギには九州以南に分布する2変種、ショウロクサギとアマクサギが知られる。特にアマクサギはトライコームを欠く点でシマクサギと共通する形質を示すため、シマクサギとの類縁性が指摘されている。本研究では、日本産のクサギ、アマクサギ、ショウロクサギ、シマクサギ、および中国産と韓国産のクサギについて、葉緑体DNA 1276 bpと核DNA 348 bpの塩基配列を決定し、MP法を用いて系統樹を作成した。外群にはボタンクサギを用いた。

解析に用いたサンプルは、①九州を除く日本と韓国のクサギおよびシマクサギを含むクレード、②中国産のクサギを含むクレード、③およびショウロクサギとアマクサギを含むクレードの3つに大別された。従って、シマクサギはアマクサギよりも日本から韓国にかけて広く分布するクサギに近縁であることが明らかになった。さらに、クサギ種内に合計14個のハプロタイプが検出される一方で、シマクサギのハプロタイプは日本から韓国にかけて広く生育するクサギと完全に一致していたことから、シマクサギの種分化は比較的最近生じたことが示唆される。


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