| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-009 (Poster presentation)

アオモンイトトンボの活発な幼虫は変態後も活発な成虫になる行動シンドロームを示すか?

*澤田浩司(福岡県立福岡高校),粕谷英一(九大・理・生物)

アオモンイトトンボには雌の成虫の体色に二型が存在する。一方は褐色の雌型雌、他方は青緑色の雄型雌であり、常染色体上の性限定遺伝によって決定されると考えられる。福岡市近郊では雌型雌と雄型雌の比が約3対1で安定する傾向にあり、負の頻度依存淘汰によって雌二型が維持されていると考えられる。羽化して雄型雌になる幼虫は、雌型雌になる幼虫と比べて水草の少ない環境を選好し、かつ水草を離れて餌の多い石底で活動する時間が長いという傾向がある。したがって、雄型雌の頻度がより低下した場合には、水草が少なく餌の多い環境で雄型雌が活発に「大胆に」活動することで採餌速度が上昇し、体サイズがより大きくなって産卵数が増加することで適応度が高まることが期待される。実際に、野外個体群における雄型雌の頻度と、雄型雌および雌型雌の平均後翅長の差には負の相関があり、雄型雌の頻度が低い場合には雄型雌がより大きいことがわかっている。

もし、活発に活動する幼虫が、変態後も活発に活動する行動シンドロームを示せば、幼虫期の「大胆さ」が成虫期にも継続することによって適応度に影響を及ぼす可能性がある。水槽内で単独飼育した雌の終齢幼虫と羽化後の雌成虫の行動をビデオに記録して分析したところ、幼虫が水草を離れて石底で活動する時間は雄型雌の方が長く、かつ成虫の飛翔回数も雄型雌の方が多かった。幼虫の活動時間と成虫の飛翔回数との関係を個体別で相関をとったところ、両者に正の相関が見られた。しかし、羽化初日とそれ以降のデータを比較すると、幼虫の「大胆さ」は変態にともないリセットされて成虫には継続されない可能性も残されており、変態時のエネルギーの消耗などのアクシデントが影響を及ぼしていると考えられる。


日本生態学会