| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-041 (Poster presentation)

全国の森林における8年間の地表徘徊性甲虫群集の変動と気象要因の関係 -モニタリングサイト1000森林・草原調査から見えてきた傾向-

*丹羽慈(自然研)

地表徘徊性甲虫類は、温帯~亜寒帯の陸域に普通に見られ、環境の撹乱・変化に対して反応しやすく、調査もしやすいことから、環境指標生物として多くの研究が行われている。環境省によるモニタリングサイト1000プロジェクトでは、気候変動等による森林生態系の変化を知るために、日本各地の森林において、樹木・鳥類・地表徘徊性甲虫類のモニタリング調査を実施している。このうち地表徘徊性甲虫類は、天然生成熟林を中心に、全国の主要な気候帯・森林タイプを含む22サイトで、毎年4回、ピットフォールトラップによる採集が行われている。本発表では、捕獲個体の大半を占めていたオサムシ科、シデムシ科、ハネカクシ科の大型地表性種、センチコガネ科について、2005~2012年の変化傾向と、気象および林床環境との関係について報告する。

冷涼な地域(北海道、本州の標高1000m以上のサイト)の高齢林(林齢100年以上と推定)では8年間で総捕獲個体数が有意に減少したが(-31%)、温暖な地域の高齢林では有意な増減がなく、二次林・人工林(林齢100年未満)では有意に増加していた(+49%)。高齢林全体では、Carabusオサムシ属とPterostichusナガゴミムシ属が減少傾向にあったが、温暖な地域では、Synuchusツヤヒラタゴミムシ属が増加傾向を示した。特に本州西部~九州では同期間に林床植生被度の減少や気温の低下がみられ、これらがSynuchus属の増加をもたらした可能性が示唆された。一方、二次林・人工林では、Carabus属とSynuchus属が増加傾向にあり、全体として落葉堆積量も増加傾向にあることから、落葉層の発達に伴って甲虫類が増加している可能性がある。


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