| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-046 (Poster presentation)

東日本大震災でできた新しい潮間帯・岩手県広田湾小友浦における底生生物相

*木下今日子(岩手大・三陸復興),松政正俊(岩手医科大・生物)

岩手県陸前高田市にある小友浦干拓地(以下小友浦)は、県内初の干拓地で1968年に造成された。小友浦は2011年に発生した東日本大震災で堤防が破壊されて浸水し、現在は潮間帯と化している。本研究では、小友浦における海産無脊椎底生動物の生息状況を調査することにより、新たに形成された潮間帯にどのような底生生物が加入したのかを明らかにした。

調査は2012年と2013年の8月に実施した。小友浦内に20の調査地点を設け、1地点につき25 cm四方の方形枠を4回置き、方形枠内の底生生物を記録した。さらに、底質が砂の12地点において、直径15cmのコアサンプラーを用いて、深さ10 cmまでの堆積物を掘り出し、目合い1 mmのふるいでふるい、残渣から底生生物を採集した。

調査地点の中で多く確認された種は、2012年ではムラサキイガイ、マガキ、キタアメリカフジツボ、スナイソゴカイであった。2013年ではこれらの種に加えて、イシダタミガイ、アサリ、コケゴカイ、マサゴゴカイ、イトゴカイ科多毛類、バルスアナジャコが多く確認された。その他の特筆すべき種として、準絶滅危惧種のオオノガイや、岩手県内では生息数の少ないアシハラガニが確認された。一方で、岩手県沿岸では普通に見られるホソウミニナやイソシジミは確認されなかった。

小友浦の底質は、がれきを含む礫〜中砂が多く、埋在性の底生生物が生息できる環境は限られている。陸前高田市は復興計画に小友浦を干潟に再生することを提示しているが、生物多様性の高い干潟に再生するのであれば、塩生湿地の造成などを含めた環境改変の検討が必要と考えられる。また、沿岸域の復旧工事にともなう周囲の環境改変が、小友浦の底生生物群集にどのような影響を及ぼすかを明らかにするためには、継続的な調査が必要である。


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