| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-047 (Poster presentation)

太平洋沿岸から瀬戸内海奥部にかけての沿岸生態系の食物網構造の比較

*柴田淳也(無所属),濱岡秀樹(瀬戸内水研),大西秀次郎,大森浩二(愛大CMES)

瀬戸内海は瀬戸や海峡部で区切られた環境異質性の高い半独立した複数の海域からなる。そのため、各海域の生物群集は、地理的に狭い範囲のなかでも、地域特有の生態系構造のもと維持されていると考えられる。瀬戸内海における沿岸生態系の維持機構を理解するうえで、海域毎の食物網構造を明らかにし、地域群集を支える生産基盤としての表層・底層生産のバランスを明らかにすることは重要である。水深が浅い瀬戸内海奥部の海域では底生一次生産量も多いと考えられることから、その食物網構造が表層一次生産を主な有機物源とする外洋の食物網構造よりも複雑になると考えられる。しかし、これまでの研究では、一部の海域を対象とした食物網構造の研究が行われているのみで、体系だった海域間比較のうえで、各海域の地域群集を支える生産基盤における違いを示す知見がなかった。そこで、本研究では、太平洋に面し外洋の影響が高いと考えられる足摺地域から豊後水道を貫け瀬戸内海奥部の広島湾・安芸灘にかけての瀬戸内海西部において、安定同位体比分析を用い、高次捕食者の魚類を指標として外洋の影響の高い地域から低い地域にかけて沿岸生態系の食物網構造がどのように変化するか評価した。

その結果、太平洋沿岸地域に比べ、水深の浅くなる瀬戸内海奥部になるほど最高次捕食者の魚食魚に底生一次生産が大きく寄与していた。このことは、瀬戸内海の中でも、隣接する海域間で生物群集を支える生産基盤のバランスが大きく異なり、水深の浅い海域ほど底生一次生産の重要性が高まることを裏付けるものである。


日本生態学会