| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-048 (Poster presentation)

阿寒湖及び木崎湖における過去100年間のプランクトン群集の変遷:新古陸水学的アプローチ

*佐藤琢馬,大槻朝(東北大院・生命),石田聖二(東邦大・生命),加三千宣,槻木玲美(愛媛大・沿環科),兵藤不二夫(岡山大・異分野),牧野渡,占部城太郎(東北大院・生命)

木崎湖と阿寒湖は日本における湖沼生態系への人間活動の影響を、強く特徴づける湖であると考えられる。しかし、両湖の生態系の変容過程は断片的にしか分かっていない。そこで本研究では、両湖の堆積物に保存されているプランクトン遺骸や藻類由来色素とともに、Daphnia 休眠卵鞘の遺伝子解析を行った。

その結果、全リンと藻類由来色素の経年変化から両湖は1950年代以前は貧栄養状態であったが、1960年代に富栄養化が急速に進行し、1970年代から再び貧栄養状態へ向かっていたことが示された。しかし、下記のようにプランクトン群集の変容過程は両湖間で異なり、現在もなお本来とは異なる群集構造が続いていることが判った。

木崎湖では、1960年代以前の貧栄養状態であった頃にはBosmina に比べDaphnia が少なかった。これはワカサギ等の魚類捕食圧によるものと思われた。しかし、オオクチバスが侵入した1980年以降はDaphnia が多いプランクトン群集構造となった。Daphnia の種組成においては、1950年代に異なる系統のD. galeata が侵入し、現在はそれが在来系統と共存する状態となった。

阿寒湖では、1960年以前はDaphnia が卓越していたが、富栄養化の進行に伴いDaphnia は減少しBosmina が卓越した。1970年代以降になると両者ともに激減した。この原因は藍藻類の増加と深層の貧酸素化による魚類からの捕食回避空間の減少によるものと考えられた。Daphnia の種組成においては、1950年代にD. galeata の侵入が確認され、1980年代以降、在来種のD. ezoensis が見られなくなった。


日本生態学会