| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-060 (Poster presentation)

キイロショウジョウバエのオス交尾器形態のゲノムワイド関連解析

*高原漠(岡大・農), 高橋一男(岡大・環境生命)

キイロショウジョウバエとその近縁種間では、オスの交尾器形態に明瞭な違いがあることが知られており、重要な分類形質の1つとなっている。特に顕著な種間変異がみられるのが、posterior lobeと呼ばれる部位で、交尾時にメス交尾器を把握する機能を持つと考えられている。このposterior lobeの種間変異、種内変異に関与する遺伝基盤に関する研究は精力的に行われており、多数の量的遺伝子座が効果を持つ事が知られている。しかし、原因遺伝子の特定はほとんど進んでおらず、種特異的な形態形成過程を理解するためには、より解像度の高い遺伝的スクリーニングが必要と考えられる。本研究では、キイロショウジョウバエを研究材料として、ゲノムワイド関連解析によって、1塩基多型(SNP)がposterior lobeの形態変異に与える影響をゲノム網羅的に検証した。全ゲノムが解読済みのDrosophila Genetic Reference Panel系統155系統について、posterior lobeの輪郭形状を楕円フーリエ記述子を用いて定量化し、主成分分析によって形態情報を第一主成分と第二主成分に縮約し、形態スコアとして用いた。分散分析によって、2544467個のSNPが形態スコアに与える影響を個別に検討したところ、第一主成分において18個、第二主成分においては64個のSNPで非常に高い統計的有意性が見られた(P<1*e-5)。これらのSNPをコーディング領域内に持つ遺伝子は併せて7個であった。この結果は、posterior lobe形態の種内変異には多数の遺伝的因子が関与することを示しており、遺伝子の発現調節変異とタンパク質の機能変異の両方が形態形成の種内変異に寄与している可能性を示唆している。


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