| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-061 (Poster presentation)

北海道の木登りカタツムリ、サッポロマイマイの行動特性

*佐伯いく代,太田民久(北大・苫小牧研究林), 丹羽慈,日高周(自然研),長田典之,日浦勉(北大・苫小牧研究林)

サッポロマイマイは北海道南部に生息する樹上性のカタツムリで、国のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。一般に本種のような樹上性生物は、地上からの観察が困難なため、生態を把握することが難しい。しかし本研究では、①ジャングルジムを用いた個体観察、②室内実験による食性調査、③越冬期の分布密度調査の3つを組み合わせ、その行動特性を明らかにすることを試みた。個体観察については、北海道大学苫小牧研究林内にある高さ14mのジャングルジムを利用し、2013年9月9日から13日まで毎日、カシワ1個体でみられたサッポロマイマイの位置を記録した。その結果、1日あたり7~13個体が確認され、それらは平均6.2m±2.1mの高さに分布していた。うち15個体に標識を付け追跡したところ、垂直方向の平均値で少なくとも1.7±1.8m/日移動していた。前日に標識した個体が次の日に発見される確率(再捕率)は60±27%であった。次に食性の嗜好性をみるため、8種類の樹木の葉とコケを入れた5つのトレイにそれぞれ6個体を放逐し、7日間、30分間隔で写真撮影を行った。最も滞留頻度の多かった種はケヤマハンノキ(延べ101回)であり、次にカシワ(82回)、コケ(51回)という順であった。一方、エゾイタヤ、サワシバは12回未満と少なく、本種の食性には顕著な嗜好性があると考えられた。さらに11~12月にかけ、苫小牧研究林内の15ヶ所の林分において、落葉層における越冬個体の分布密度を調査した。その結果、伐採履歴のない成熟した落葉広葉樹林において最も値が高く(0.69/㎡)、落葉広葉樹の二次林がそれに続いた(0.22/㎡)。一方、人工造林地や皆伐跡地では密度が低く(0~0.01/㎡)、森林タイプの違いが本種の分布パターンに影響を与えている可能性が示唆された。


日本生態学会