| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-105 (Poster presentation)

サッポロフキバッタの雌による精子の選択と隠蔽された生殖的隔離

*土屋香織,菅野良一,秋元信一(北大・農)

サッポロフキバッタでは,雌の交尾拒否力と雄の交尾活力は地域集団によって異なり,交尾活力の弱い集団の雄と交尾拒否力の強い集団の雌を交配させると,集団内交配より交尾頻度が低くなることから,生殖的隔離が生じている可能性がある。逆の組み合わせで交配させると,集団内交配よりも交尾頻度が高くなることが報告されているが,雌は雄の精子をほとんど受け取っていないことが多く,雌による精子の選択が行われている可能性がある。そこで,雌の交尾拒否力と雄の交尾活力が強い手稲集団と雌の交尾拒否力と雄の交尾活力が弱い観音沢集団を用いて,集団内・集団間交配を行い,雌が受け取った精子数と体外に排出した精子数を調べた。

交尾拒否力が強い手稲集団の雌は,集団間交尾では,交尾時間を短くすることで受け取る精子数を少なくしていた。一方,交尾拒否力が弱い観音沢集団の雌は,交尾時間が長くなる傾向があり,受け取った精子数は多くなっていたが,受け取った精子を精子貯蔵器官内に取り込まずに排出できることが明らかになった。これらの結果から,本種では地域集団によって雌の精子の選択方法に違いがあり,雌による精子の排出や交尾時間の調節によって生殖的隔離が生じている可能性が示唆された。さらに,この2つの集団の近隣に位置し,観音沢集団よりも雌の交尾拒否力と雄の交尾活力が弱いと予想される豊滝集団を用いて同様の実験を行っており,その結果も合わせて報告する。


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