| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-120 (Poster presentation)

群れの動きの決定における個体間のコンフリクト

岡本暁子(早大・政経, 中京大・国際教養)

本研究は、群れの動きの決定における個体間のコンフリクトを、インドネシア、スラウェシ島南西部のカレンタ自然保護区に生息する野生ムーアモンキー(Macaca maurus)のデータを用いて検討した。ムーアモンキーは複数のオスと複数のメスが集団を作り、まとまりを保ちながら移動、採食をおこなう。群れのまとまりを保つことの利益と不利益は、性や年齢の違い、優位個体であるか劣位個体であるか、群れから移出する前のオスであるか移入オスであるか、アカンボウを連れているかどうかなどによって、個体間で不一致が生じうる。本研究はこのような不一致を、群れの個体のアクティビティの同調がおこるとき、どのような個体が先行するのか、逸脱をするのはどのような個体なのか、ということから検討した。本研究の対象は、1988年より個体識別に基づいた観察がおこなわれていた、Bグループと呼ばれる群れである。群れの構成は、移入してきたオトナオス2頭、群れ出自のオトナオス2頭、アカンボウを連れているオトナメス4頭、連れていないオトナメス7頭、ワカモノオス6頭、ワカモノメス4頭、コドモオス5頭、コドモメス5頭の計35頭であった。群れを構成するすべての個体のデータは5分間隔のスキャンサンプリングで収集された。5分の間に発見された個体の名前、アクティビティ、空間位置、近接個体および群れの広がりが記録された。分析の結果、群れのアクティビティが移動に変化したとき、群れから移出する前のオトナオスとアカンボウを連れていないオトナメスが先行して移動を開始していた。また、アカンボウを連れたオトナメスは群れが移動しているとき、それに同調しない傾向があった。これらの結果を、本研究のデータが取得された3年後におきた対象群の分裂のデータとあわせて検討し、群れの動きの決定における個体間のコンフリクトと群れの分裂との関わりについて論じる。


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