| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-130 (Poster presentation)

保護区の設定で自然は守れるか?「経験の絶滅」を防ぐための都市計画

*曽我昌史1,2,山浦悠一1,愛甲哲也1,久保雄広3,庄子康1,Kevin J. Gaston2(1北大・農,2University of Exeter・ESI,3京大・農)

人々が生物多様性の価値(生態系サービス)を認識し、自然環境保全へ関心を持つためには、日常生活で自然と触れ合うことが必要不可欠である。特に、人口の大多数を抱える都市は人と自然を結びつける上で重要な役割を担っており、今後は人と自然との触れ合いを最大化させた都市計画が求められる。そこで本研究では、土地の共有戦略と節約戦略(land-sharing/ sparing)の2つの対極的な開発戦略に注目し、都市形態の違いが住民の公共緑地の利用頻度に及ぼす影響を明らかにした。

2013年8月、東京都にて共有戦略・節約戦略タイプの調査地域を5つずつ設定し、各地域で千人ずつ、計一万人を対象にアンケート調査を行った。アンケートでは、住居周辺の公共緑地の利用頻度および公共緑地に対する満足度など計10項目を計測した。そして、返却されたアンケート1,644通を集計した結果、節約戦略タイプの調査地域に比べて共有戦略タイプの住民の方が公共緑地の利用頻度が有意に高いことが示された。さらに、公共緑地に対する満足度も共有戦略タイプの調査地域で高かった。

近年、多様性保全に配慮した都市計画の議論が盛んに行われるようになったが、当議論では節約戦略が最適であると結論付ける研究が圧倒的に多い。しかし上記の結果は、過度な節約戦略の推奨は、生物多様性に対する人々の関心を低下させる危険性を示唆している。本発表では、都市計画が抱える生物多様性保全と緑地利用の促進との間のジレンマについて議論したい。


日本生態学会