| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-138 (Poster presentation)

トウキョウサンショウウオにおけるアライグマ対策の一例

*藤田宏之,石井克彦

トウキョウサンショウウオ Hynobius tokyoensis は東北地方の一部および群馬県を除く関東地方に分布しているが、埼玉県では秩父地方や北部・西部の丘陵地などに生息している。近年減少が著しいとされ、埼玉県レッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類に位置づけられている。埼玉県大里郡寄居町において、アライグマなど天敵の捕食と考えられる個体数減少が発生し、2011 年の産卵期より成体および卵嚢の保全の取り組みをおこなった。以後産卵期には継続して取り組み、毎年技術的改良を加えて実施した。

はじめに、実験地の水路は土砂の流入により産卵場所の確保が必要となり、水路の浚渫は毎シーズンおこなっている作業である。天敵侵入防止対策として、初年度の2011年にはヨシズを利用したシェルターを設置した。ヨシズは耐久性には難があることから、2012年からはポリカーボネート製農業用波板を材料にしたシェルターを設置した。アライグマの足跡が多数確認されたが、シェルターの下で待機している成体や産卵を確認したことや、卵嚢数も増加傾向にあり、一定の効果があったと考えられる。また、ポリカーボネート製農業用波板は耐久性にすぐれ、入手しやすいことから有効な材料と考えられる。

成体だけでなく卵嚢の食害も発生しているが、保護容器に卵嚢を収容する保全対策もおこなった。孔を開けたシール容器に収容し、シェルターの下に戻し孵化後放流した。

ほとんどの卵を孵化させることができたが、2013年に共食いを確認し、孵化後に幼生を放流するタイミングに課題を残した。さらに0.5対の卵嚢すべてが死卵となったものがあり、未授精の可能性もあるが容器内の水温の上昇による死亡も考えられ容器内の水温調整も課題として残した。

アライグマの個体数は有害防除活動で減少していると考えられるが、未だに足跡が確認されることから、今後も改良を重ねて保全活動を継続したい。


日本生態学会