| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-175 (Poster presentation)

大台ヶ原における小規模防鹿柵による実生・稚樹バンクの再生

*松井淳,内田真弥,桑村泰輝,粟井縁(奈教大),幸田良介(大阪環農水研),今村彰生(北教大旭川)

大台ヶ原では高密度のニホンジカの影響で森林の更新が阻害されてきた。本研究の目的は、林冠ギャップ下に小規模防鹿柵を設置する手法が当地での後継樹確保に有効かを評価することである。

2007年6月、西大台地区の林相の異なる5地点で、光不足による実生の定着阻害を排除するためギャップ下に12基の小規模防鹿柵(6×12 m)を設置し、防鹿柵の内外に同数配置した1×2 mの調査枠46個で2010年まで実生のセンサスを行った。調査地では林床のスズタケは既に消失していた。この間西大台におけるシカの生息密度は2010年まで11.7~25.1頭/km2で推移し2011年には5.7頭/km2に減少した(環境省 2012)。さらに2010年と2012年には防鹿柵内の高さ20 cm以上の稚樹を調査した。

2010年には5地点の全調査枠合計で、33種1422本の実生が確認された。種組成は地点ごとの林相や母樹の配置により左右された。沢沿いの1地点を除き前年からの実生消失率および当年性実生の比率は柵外で高かった。主要種の平均樹高は柵内で高くリョウブ、ミズメ、ドウダンツツジでは保護3年間で20 cmを超えた。ブナ、オオイタヤメイゲツ、ヒノキ、ウラジロモミでは10cm未満であった。柵外ではすべての種が6 cm未満で開始当初と変化がなかった。

稚樹ではキハダ、ミズメ、リョウブなどに樹高が100 cmを超える個体があり2012年には一部では200 cmを超える稚樹集団も形成された。今後は極相種の加入が課題である。一方柵外には2012年まで20 cmを超える稚樹は現れなかった。

以上により西大台のギャップにおいて小規模防鹿柵は実生・稚樹バンクの再生に有効であることが示された。


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