| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-179 (Poster presentation)

岩手県の砂浜植生回復に関わる生態学的な評価と保全エリアの提案

*島田直明,昆野絋士(岩手県立大・総合政策),川西基博(鹿児島大・教育),早坂大亮(近畿大・農)

東日本大震災によって引き起こされた津波や地盤沈下によって,沿岸域では甚大な被害を受け,海岸部の砂浜植生や防潮林にも多大な影響を与えた。震災から3年が経ち,岩手県内でも防潮堤の工事が急ピッチで進んでいる。しかし,その中で自然環境について議論されることは,ほとんど見られない。そこで本報告では,砂浜の海浜性種の植物相調査から見て岩手県内で保全上重要である砂浜を抽出すること,重要であると考えられる砂浜における保全エリアを提案することを目的に調査を行った。

砂浜面積の津波前後の変化については,岩手県の津波前後の空中写真および現地調査から,津波前後の比較を行った。海浜性種の植物相調査については,岩手県の砂浜・礫浜約40箇所において調査を行い,海浜性種が豊かであった場所を地図上に記録した。調査は2012~2014年に行った。また,現地調査時に防潮堤など人工物の有無や砂浜との位置関係などを記載した。これらのデータを用い,海浜性種の種数と砂浜面積の関係を求めた。

海浜性種の種数と砂浜面積の関係からは,面積が広いほど多くの海浜性種を確認することができ,2ha以下であると,海浜性種の種数が少なくなる海岸も確認された。2haを上回る面積を有する砂浜は6箇所(吹切・原子内・夏井川河口・十府ヶ浦・明戸・津軽石川河口)と限られていた。2ha以上の砂浜においても,海浜性種が出現する場所は限定された。またこれらの大面積の砂浜においても,海浜植生の帯状構造の典型的な様相を示している砂浜は確認されなかった。2ha以下の砂浜であっても,海浜性種の多い海岸は,海浜性種の源泉として重要である(川尻川河口・久喜・小本・沼の浜・船越・片岸・広田).これらの砂浜の保全エリアについて,提言を行う。


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