| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-182 (Poster presentation)

ダムがヨシノボリ属魚類の体サイズに及ぼす影響

*小野田幸生(自然共生研究セ), 田屋祐樹(株 国土開発センター), 赤松史一(京大・生態研), 加藤康充(自然共生研究セ), 川西亮太(土木研究所), 萱場祐一(土木研究所)

ダムは生息範囲を狭め、餌資源を制限することで、魚類の体サイズに影響を及ぼす可能性がある。その影響を検証するために、ダムが有る区間と無い区間の両方において、上流側と下流側の体長分布を比較した。また、体長と湿重量の関係性についても比較した。対象ダムとして中部地方にある4つのダム(君ヶ野ダム・小里川ダム・上津ダム・日吉防災ダム)を、対照区として土岐川を設定した。対象魚は、ダム上下流で比較的多く採集できるカワヨシノボリとした。

各調査地点の上下流で体長分布を比較した結果、上津ダム以外の3つのダムと対照区の土岐川で分布形が有意に異なった。上下流で分布の幅が異なる地点もあったが、体長分布のピークに着目すると、下流側で大きい傾向が見られた。また、各調査地点の上下流で体長に対する湿重量の関係性を比較した結果、上下流の流域面積の差が大きかった小里川ダムと土岐川において有意差がみられた。

対照区の土岐川においても体長の分布形や湿重量との関係性が上下流で異なったことから、各ダムの上下流でみられた差はダムによる影響とは考えにくい。ダムの影響が検出されなかった理由として、評価対象として用いたカワヨシノボリが移動能力の低い種であり、ダムによる生息範囲の縮小の影響をうけなかった可能性が考えられる。一方で、体長の分布形や湿重量との関係について流域面積に沿った傾向が見られたことは、流域面積が魚類の体サイズや成長に対して潜在的に影響を及ぼすことを示唆する。そのため、回遊魚などの移動性の高い魚類の体サイズはダムによって影響を受ける可能性があり、慎重な評価が必要とされるだろう。


日本生態学会