| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-007 (Poster presentation)

クラスター分析を用いた日本産シダ植物種構成による地域分類

*松浦亮介(信大・院・総工),佐藤利幸(信大・院・総工)

植物相の分布境界域を探ることは植物相の構成を左右する要因の解明や、植生推移プロセス解明への基礎情報となる。しかし、これまである特定地域での植生変化について追跡研究を行った例はあまり多くない。本研究では植生の変化に対する気候的、人為的な影響を理解するため、地史的な影響が少なく、無機的環境が分布に対しより大きく影響すると予測されるシダ植物を用いてその植物相の地理的変化を明らかにする。これまで分布パターンの類似性からシダ植物相の解析を行ってきたが、その地域的な境界は明確でなかった。そこで、本研究では地域ごとの種構成の類似性を解析し、シダ植物相の境界域がどこにあるかを探る。先行研究から分布情報の確かなシダ植物種652種を用いて、階層的クラスター分析から地域のシダ植物相のグルーピングを行った。本解析において、各クラスターが全地点の5%以上になる距離を基準とし、分割されたクラスター間での境界域を決定した。さらに、グルーピングされた階層のクラスターについて緯度経度ごとの中心と多様度指数を算出した。クラスター分析の結果から、地域のクラスターを上位12位の階層まで抽出した。これをもとに種構成の境界域と分布境界線を比較したところ類似する境界がいくつか見られた。また、ほぼ全てのクラスターの分布範囲が緯度または経度で区別された。多様度指数についてはα、γ多様度では緯度と負の相関が見られたが、β多様度では相関が見られなかった。本研究により、日本産シダ植物相の種構成が区分される領域を示すことができた。今後は、植生変化の観察のための区分ごとの表徴種を探り、更に本研究で用いた約20年以上前の過去データと現在のシダ植生を今回示された境界領域を中心に変動したかどうか探っていきたい。


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