| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-032 (Poster presentation)

落葉広葉樹林内の光環境に対する稚樹の形態的・生理的応答の季節変化

山田晃嗣(岐阜大・応用生物),村岡裕由(岐阜大・流域圏セ)

稚樹が生育する林床に入射する光は限られており、林床植物の成長には効率的な受光と光合成生産が重要である。本研究は光環境の季節変化と光の入射方向の偏りに対して稚樹の形態的特性と生理的特性がどのような応答を示すのかを明らかにすることを目的とした。

2012年と2013年5月から10月に、岐阜県高山市の冷温帯落葉広葉樹林でミズナラ、オオカメノキ、ウリハダカエデの稚樹を対象として調査を行った。2週間おきに光環境の解析のために全天写真の撮影と、光-光合成曲線の測定を行った。2013年には植物体の構造的特徴を計測した。そして光環境に対する形態的応答と、それが受光量と光合成量にもたらす効果を評価するために、森林内での調査結果とシミュレーションモデル(Y-Plant)によって季節を通じて受光量と光合成量を個体ごとに解析した。

林床の光環境は5月下旬に急激に暗くなり、それ以降も徐々に暗くなった。葉面の配向は全個体で季節変化し、展葉期に葉の向きが大きく変化した。 葉の最大光合成速度の季節変化は樹種により異なった。オオカメノキは5月に最も高くその後低下した。ミズナラは展葉して7月まで増加してその後低下した。ウリハダカエデは明瞭な季節変化は見られなかった。3樹種ともに6月から9月にかけて生育地点が明るいほど最大光合成速度が高かった。

Y-Plantによる解析の結果(1) どの季節でもほとんどの個体の葉面配向は、それぞれの生育場所で実現し得る最大の光合成生産量の95%以上を達成した。(2) 樹種ごとに光合成生産量が最も多くなる季節が異なることが示された。

以上の結果から、落葉広葉樹稚樹は葉面の向きを調整することで効率的に受光し、光合成生産を行っていることが明らかとなった。また光環境に対して光合成特性を馴化させていることにより効率的に光合成をしていることが示唆された。


日本生態学会