| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-041 (Poster presentation)

ハワイフトモモの葉形質多型における生理的基盤-複数の環境因子に対するラミナとトライコームの個別的応答-

*辻井悠希,小野田雄介(京大・農・森林生態),伊津野彩子,井鷺裕司(京大・農・森林生物),北山兼弘(京大・農・森林生態)

樹木の機能形質は、環境との相互作用によって多様化しており、その多様性がどう進化してきたかは、生態学の大きなテーマである。植物の表現型は様々な機能形質の集合であるが、個々の形質が異なる環境因子に個別に応答するのか、あるいは複数の形質が同調して応答するのかは系統立てて調べられていない。

ハワイフトモモは競争種の欠如のため、ハワイの多様な環境にニッチを拡大し、葉などに極端な多型が見られることから、多様化プロセスの研究における理想的なモデル樹種である。私達は、ハワイ島マウナロア山において、150年と3000年性の2溶岩上にそれぞれ100mから森林限界(2400m)まで5標高を選び、各サイト約40個体の形質を測定した。標高に沿って気温は線的に減少、降水量は正規型の分布(中標高で過湿、高標高で乾燥)を示し、溶岩齢の増加とともに土壌が発達する。

野外個体の各形質は、混合モデルを用いて、階層スケールを考慮し、環境因子ごとの説明力を算出した。また、各サイトの野外個体の形質は、各サイトからの種子を共通圃場で栽培した個体と比較し、形質への遺伝的な影響を評価した。

各形質は、多様な環境を反映して大きく変化し、ラミナは気温に、トライコームは降水量に応答するなど、異なる環境因子にある程度独立して応答した。共通圃場の表現型は、野外個体と類似し、表現型の変異は環境ではなく遺伝的に決定されていた。また、土壌深などの微環境は同所的な多様性を一部説明した。これらの結果は、複数の環境因子(気象と微環境)が各形質に個別に影響し、それぞれの形質の応答の違いの組み合わせとして、植物の表現型の多様性が決定されることを示唆した。


日本生態学会