| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-048 (Poster presentation)

異なる光環境における小笠原外来種アカギ(Bischofia javanica Blume)の病原菌抵抗性

*佐藤惟, 山路恵子(筑波大院・生命環境), 中野隆志(山梨環境研), 石田厚(京大・生態研)

アカギとはコミカンソウ科の常緑高木であり、小笠原諸島における外来樹種である。父島における先行研究より、異なる光環境(ギャップおよび林床)が生長や物質生産などの病原菌抵抗性に関わる要素を変化させ、生残率に影響を及ぼすことが示唆された。そのため本研究では異なる光環境におけるアカギ実生生残メカニズムの解明を目的とした。

実生胚軸部に含まれるクロロゲン酸類縁体は抗菌活性を有する可能性が考えられた。クロロゲン酸およびカフェイン酸の標品を用いて野外アカギ枯死実生胚軸部から分離された4菌株 (WG株、BM株、BR株、B株) に対する抗菌活性試験を行った結果、両物質ともWG株、BM株に対する菌糸生育阻害を示した。また、野外実生胚軸部の切片を染色し観察したところ、ギャップ区の胚軸部表層にクロロゲン酸類縁体が局在化し高濃度に存在していた。

野外健全実生の胚軸部から内生菌を分離した結果、WG様株がギャップ区および林床区の実生から高頻度に分離された。WG株とWG様株はともにPhomopsis sp.と同定され、WG株が内生菌として健全実生の胚軸部にも生息している可能性が高いと考えられた。実験室内でギャップ区および林床区の光環境を再現し生育させたアカギ実生にWG株を接種した結果、生残率に有意な差はなかったが、ギャップ区で高い傾向にあった。菌未接種区において生長の評価を行ったところギャップ区のほうが良好であった。クロロゲン酸類縁体濃度については両区で有意な差が確認されなかったが、ギャップ区のほうで表層における本化合物の局在化の傾向がより強まっていた。

以上の結果より、生育する光環境の違いによる実生の病原菌抵抗性と内生菌の病原性の拮抗関係の変化が、小笠原におけるアカギ実生の生残を決定する要因になると推測された。


日本生態学会