| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-073 (Poster presentation)

何故クロモは結実しないのか~水生植物の花粉干渉~

*川畑幸樹 滋賀県立大・院・環境

水生植物の特徴として、雑種の多さがあげられる。このことは近縁種間で完全な生殖隔離が起きていないことを示しており、花粉干渉の存在が示唆される。また、タヌキモ属Utricularia Lの交配実験(Kameyama et al 2005)やクロモHydrilla verticillataの栽培実験(川畑 2013)においても花粉干渉の存在を示唆する結果が得られている。しかしながら、いずれの研究も花粉干渉の検証を想定したものではなく、水生植物の花粉干渉はその存在を示唆されながらも実証研究例がない。そこで、本研究ではクロモを用いた実証研究を行う。

クロモは全国的に分布する在来種である。国内には殖芽を形成する雌雄異株と塊茎を形成する雌雄同株の2系統が存在し、雌雄異株は2倍体と3倍体、雌雄同株は全て3倍体である。2倍体の雄株と雌株のみで栽培すると盛んに結実するが、野外における結実は稀である。そこで本研究では、野外で結実が稀であるのは不稔の3倍体系統から花粉干渉を受けているためという仮説を立て実証実験を行った。

5つの水槽に各系統の頻度を変えて植え付ける手法をとった。この時、2倍体雌株と2倍体雄株の頻度は一定にし、3倍体雌雄同株の頻度のみを変化させた。雄花数、雌花数、果実数、果実あたりの種子数を計測した。また、種子は正常、異常、未熟の3段階にわけてカウントした。

1果実あたりの平均正常種子数は3倍体の存在しない条件で最も多く1.66個となった。この値は他のどの条件よりも有意に高かった(t-test P<0.01)。また1果実あたりの平均異常種子数や未熟種子数は3倍体の存在しない条件で最も少なくなった。以上のように、1果実あたりの各種子数は3倍体花粉の有る無しで差が認められたが、頻度に依存する傾向は認められなかった。


日本生態学会