| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-078 (Poster presentation)

山地渓谷林の下層種チドリノキの生育立地と萌芽特性

*田畑早紀(三重大・生資),中井亜理沙,万木豊,木佐貫博光(三重大院・生資)

河川の上流部に位置する渓谷林は複雑な微地形から成り,地表撹乱の影響を受けて形成される(金子,1995)。渓谷林に生育する植物の種組成は多様であり,異なる微地形間では基質や資源の条件が異なるため,同じ種でも樹形や個体サイズは生育場所によって異なると考えられる。発達した森林では,高木種による被圧で成長が制限されるため,下層種は萌芽などの栄養繁殖で更新するものが多い(町田ら,1987;Hara,1987)。そこで,本研究は渓谷林の下層に優占する萌芽性落葉高木チドリノキ(Acer carpinifolium)を対象に,微地形が萌芽生産や個体群の動態に与える影響を解明することを目的とした。

微地形からチドリノキの分布をみると, 苔が付着した礫地に偏っていた。また,個体の88%が林冠木の樹冠下に分布していた。さらに, 幹本数に対し母幹直径や礫度,高木の被圧が正の影響を及ぼしていたことから,チドリノキでは保険的な萌芽(Sakai et al.,1995)が行われている可能性がある。幹の生残に対し,母幹直径,幹直径が正の影響を及ぼし,個体の直径断面積合計は負の影響を及ぼしていた。このことは,直径が太い幹は枯死しにくいが,地上部が大きい個体ほど幹が枯死しやすいことを示唆する。また,成長に対し,礫度,凹凸度が正の影響を及ぼし,下層木の競争指数が負の影響を及ぼしていたことから,下層における個体間競争が激しい場所では成長が制限される一方で,凸地や礫地は下層種の立木密度が低いため,成長が抑制されにくいのだろう。

渓谷林において,チドリノキは礫割合の多い立地に適応しており,その萌芽特性は個体の維持(藤木ら,1993)や個体群の優占度を高める(久保,2001)ことに寄与していると考えられる。


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