| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-097 (Poster presentation)

食虫植物ナガバノイシモチソウで生じる訪問昆虫をめぐるコンフリクト

田川一希*(九大シス生),渡邊幹男(愛知教育大),矢原徹一(九大)

食虫植物は,捕虫葉で昆虫を捕らえると共に,花へポリネーターを誘引する。昆虫の利用が,花と捕虫葉で独立なものでないとき,これらの間で訪問昆虫をめぐる利害の不一致である,コンフリクトが生じる可能性がある。例えば,訪花したポリネーターが捕虫葉で捕獲されると,正常な他家受粉が阻害されることになる。食虫植物種の多くは,花と捕虫葉を空間的あるいは時間的に分離している。このことがポリネーターと餌昆虫の種重複を防ぎ,コンフリクトの発生を抑制するうえで有効に働いていると考えられてきた。

ナガバノイシモチソウDrosera indicaは,捕虫葉を花のごく近傍に展葉するという特異な形態をもち,餌昆虫とポリネーターの種重複が生じる可能性が高いと推測される。筆者は,ナガバノイシモチソウにおいては,ポリネーターを利用して遺伝的に多様な子孫を残すことよりも,可能な限り多くの餌昆虫を捕らえるよう選択圧が加わったのではないか,と考えた。このような場合,食虫植物にとって,花は生殖器官としての役割はもとより,捕虫葉への誘引器官としても機能する可能性がある。

種重複の実態を把握するため,季節を通じてナガバノイシモチソウのポリネーター種と餌昆虫種を野外で調査した。捕虫における花の効果を確かめるため,人為的に花をカットした集団とコントロール集団とで,餌昆虫の捕獲数を比較した。また,ナガバノイシモチソウの主要なポリネーターとして,ヒメヒラタアブが挙げられる。ヒメヒラタアブは植物体に着地する際に,前後移動を繰り返す。この行動の捕虫葉回避における有効性についても,定量的な解析を試みた。ナガバノイシモチソウには赤色の花をつける株と白色の花をつける株があり,両株は異所的に分布する。先のそれぞれの項目について,赤花株と白花株で結果を比較した。


日本生態学会