| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-102 (Poster presentation)

外来オッタチカタバミが在来カタバミの繁殖に与える影響

*深津美佐紀,堂囿いくみ(学芸大・教育・生物),堀江佐知子(東北大・院・生命科学),牧雅之(東北大・植物園)

近年,外来種と近縁在来種間に生じる繁殖干渉が注目されている.外来種オッタチカタバミ(Oxalis dillenii)と在来種カタバミ(Oxalis corniculata)は同時期同所的に生育する草本である.2種は托葉と茎の立ち方の特徴に違いがあるが,2種の生育地内で両種の形質を持つカタバミ属(不明タイプ)を発見した.そこで本研究では,外来種オッタチカタバミ・在来種カタバミ・不明タイプの繁殖に関わる相互作用を明らかにするために,学芸大構内(小金井市)・台場周辺・奥多摩において調査を行った.

(1)外来種・在来種・不明タイプの訪花昆虫種を調べたところ,全てのタイプにおいて主な訪花昆虫はコハナバチ(コハナバチ科)であった.また,コハナバチの各タイプへの訪花頻度は,時期による違いがみられた.

(2)学芸大において,外来種では自動自家受粉による結実率が自然状態の結実率と同程度であったが,在来種では自動自家受粉による結実率が自然状態の結実率よりも低くなった.

(3)不明タイプの形態的特徴を明らかにするために,花弁・萼・雄蕊・雌蕊のサイズを測定し,判別分析を行った.不明タイプの花形態は,外来種と在来種の中間の値を示した.また,不明タイプの繁殖特性を調べたところ,果実ができない雌性不稔であるが,葯内の花粉は大きさが不ぞろいで,大きな花粉のみ稔性をもっていた.

(4)在来種・外来種・不明タイプ間で人工受粉実験を行ったところ,異種間交配においても種子が生産された.

以上の結果より,外来種や不明タイプがコハナバチによって送粉され,在来種と交配する可能性が示唆された.さらに,不明タイプは外来種と在来種の雑種の可能性が考えられる.遺伝的な解析も踏まえ,2種間の繁殖干渉について検討する.


日本生態学会