| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-114 (Poster presentation)

ハバチ上科のホスト変遷は被子植物の出現時期を暗示している?

*井坂友一(信州大学・院・総工),佐藤利幸(信州大学・理・生物)

地球上で最も多様化した昆虫の中でも植食性昆虫はその多くを占めており,その多様性は被子植物の起源と多様化に起因すると考えられている.植食性昆虫-植物を材料とした共進化研究は,昆虫の多様性を解明するモデルケースとして今なお盛んである.植食性昆虫に最も利用されている植物は,最も多様化した分類群の被子植物であり,化石記録から約1億4500万年前 (145 Ma) に起源したと考えられている.しかし,植食性昆虫-植物の共進化研究が進むにつれ,分子系統解析により推定された被子植物食系統の昆虫の出現時期が,化石による被子植物の起源仮説以前に遡る可能性が示唆されている.そのため植食性昆虫-植物の共進化の歴史を見直す必要性がある.また近年,被子植物の起源が220 Ma という新たな仮説が分子系統解析により示された.

ハチ目は昆虫の中で多様性の高い分類群のひとつで,現在12万種以上が記載されている.ハチ目の中で祖先的である広腰亜目は約8,500種からなり,その大部分は幼虫時植食性である.中でも最も多様な分類群はハバチ上科(約7,500種)であり,それを構成する現存6科はグループ(科/亜科)ごとにホスト植物が比較的決まっており,被子植物を利用するグループの種数(約6,400種)は,シダ・裸子植物を利用するグループ(約1,100種)に比べ多様である.ハバチ上科6科56種の塩基配列情報約2.5 kサイトを用い,分子系統樹を構築し分岐年代を推定した.その結果,被子植物食系統は220 Maから出現しており,被子植物がこの時期に既に出現していた可能性を示した.また,ハバチ上科の多様化が促進された時期は170 Maで,被子植物が多様化を始めた時期と同調する可能性が示唆された.


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