| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-125 (Poster presentation)

台風撹乱が多雪地のスギのクローン構造に及ぼす影響

*長島崇史(新潟大・自然研),木村恵(森林総研),津村義彦(森林総研),本間航介(新潟大・農),阿部晴恵(新潟大・農),崎尾均(新潟大・農)

スギ(Cryptomeria japonica D. Don)は温帯に分布する常緑針葉樹であり、多雪環境に適応した「伏条」と呼ばれるクローナル成長を行うことが知られている。しかし、台風などの大規模な撹乱が生じた場合は実生のセーフサイトが増加したり、従来の伏条とは異なったクローン構造が形成されたりする可能性がある。そこで本研究では、台風の大規模撹乱が多雪地帯のスギのクローン構造に与える影響を明らかにするため、多雪地において台風撹乱の被害地と被害を受けていない林分でプロットを設置し、SSRマーカーを用いてスギのクローン構造を調べた。

クローン構造は(a)中径幹が集中して分布するジェネット,(b)大径幹と小径幹によって構成され直線的な広がりを持つジェネット,(c)台風撹乱による根返り個体の枝が直立し,多数の小径幹が直線的に分布するジェネットの3つのパターンに分けられた。aは稚樹の段階で積雪により匍匐して発生した伏条によるもの,bは積雪により成木の枝が接地した伏条によるものであると考えられた。また,cは台風撹乱による根返り個体の枝が再生したものであった。多雪地帯のスギ天然林において台風と積雪は多様なクローン構造を形成する要因のひとつと考えられる。一つの樹種の中でも,撹乱や環境ストレスといった外的な要因に応じて多様なクローナル成長のパターンを示すことが示唆された。


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