| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-158 (Poster presentation)

定着初期段階におけるアライグマの生息分布と繁殖状況

*落合菜知香(筑波大・生命環境),山﨑晃司(茨城県自然博物館),藤岡正博(筑波大・生命環境)

アライグマは北米原産の中型哺乳類で、農業被害などを引き起こしているため特定外来生物に指定されている。茨城県ではまだ定着初期段階であるが、今後個体数増加に伴い各種被害の深刻化が懸念される。本研究では、茨城県内で捕獲されたアライグマのデータを用いて、生息分布と繁殖特性、個体群構造を明らかにすることを目的とした。

生息分布予測は、フリーソフトMaxentを用いて茨城県西部および南部地域の124地点の捕獲データと8種類の環境要因(森林面積、林縁長、果樹園面積、水田面積、畑面積、市街地面積、水辺延長、景観多様度)を用いて500mメッシュ単位でモデル化した。作成したモデルでは林縁長の寄与率および重要度がもっとも高かった。林縁長と水辺延長は大きいほどアライグマの生息確率が高く、景観多様度はある程度の値までは大きいほど生息確率が増加したが、それ以上では緩やかに減少した。茨城県には、林縁長が長く景観多様度が高い農村地域が広く存在するため、今後アライグマの生息域がさらに広がることが予想される。

個体群構成については、茨城県内で捕獲された283個体の齢査定と、10ヶ月齢以上の雌48個体について産仔数推定を行った。経産個体の割合は0歳50%(n = 2)、1歳100%(n = 18)、2歳以上92.9%(n = 28)で、産仔数は1歳以下の平均が3.89、2歳以上の平均が5.07となり、いずれも原産地や国内他地域よりも高い傾向があった。齢構成も2010-2012年度に比べて2013年度は0歳の個体の割合が増加しており、今後の個体群の急激な増加が示唆された。 

生息分布予測と個体群構成から、茨城県ではアライグマの生息数や被害が今後増加する可能性が高いことが示されたことから、今後は全県的な捕獲、モニタリングを行うと同時に、県民への啓発が重要であると考えられる。


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