| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-013 (Poster presentation)

環境不均質性を反映した海洋島の生態系モデル

*吉田勝彦(国立環境研・生物), 畑 憲治(首都大院・理工・生命), 川上和人(森林総研・野生動物), 平舘俊太郎((独)農環研), 可知直毅(首都大院・理工・生命)

小さな海洋島の中でも環境は一様ではなく、生物の分布や生態系の変化に影響を与えている。例えば海鳥は海に近い場所を好んで営巣するものが多いので、海鳥の排泄物によってもたらされる栄養塩は海に近い場所に集中して供給されることが予想される。また急な傾斜地は、裸地化した場合に土壌侵食を受けやすので、植物の実生が定着しにくく、植生の回復が遅れると予想される。このような局所スケールにおける環境の空間的不均質性は外来生物駆除後の植生回復にも影響すると考えられる。そこで本研究では、外来生物駆除後の生態系変化をより細やかな空間スケールで予測することを目的とし、島内の環境不均質性を表現できるように空間構造を導入した生態系モデルを開発した。このモデルでは、島を複数の細かい区画に分け、それぞれの区画には、標高、傾斜、海からの距離、地表面の状態を導入する。これらの区画を海からの距離に従って直線上に配列する。海鳥は海に近い傾斜地に営巣する。植生は個々の区画での栄養塩量に応じて発達し、動物相もそれに応じて発達する。また、地表面の傾斜角や植生の状態に応じて土壌侵食量が変化し、それはまた栄養塩状態や植生変化に影響することになる。このモデルを用いて外来ヤギを駆除するシミュレーションを行った結果、ヤギの駆除後に海鳥による栄養塩供給が回復する海岸部では植生の大幅な回復が見られた。しかし、ヤギの排泄物を介した栄養塩循環が止まるために、海鳥が営巣しない内陸部では貧栄養化が進み、植生の回復が遅れると共に在来植物の絶滅が起こる可能性があることが示唆された。


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