| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-015 (Poster presentation)

水田に生物がいると群集組成はどう変化するか~ドジョウ、タニシ、オタマジャクシが果たす役割~

*辻咲恵(龍谷大・理工),小山奈々(東大・農),大塚泰介(琵琶湖博物館),一般財団法人池田町農業公社(福井県),(株)ネイチャースケープ,岩井紀子(農工大),丸山敦(龍谷大・理工)

水田で使用する農薬や肥料を削減する方法の1つとして、生物的防除が知られる。導入した生物が雑草や食害生物を消費することによって農薬の必要量が減少することが期待されるほか、餌探索行動で土壌が攪拌されることによる雑草防除効果、施肥効率の向上も期待される。しかし、水田における生物防除の試みが盛んな割に、その検証は十分ではない。

そこで本研究では、田植えから中干しまでの1ヶ月間、福井県池田町の水田に1.2m×1.0方形、反密閉式のエンクロージャーを設置し、生物の導入が雑草および植物プランクトン組成に与える影響について、摂食効果と攪拌効果に注目して調査した。19筆の水田それぞれに4つずつ設置し、ランダムにドジョウ、タニシ、オタマジャクシ、対照区画を割り当てた。導入個体数は各生物の自然条件下での生息密度より、ドジョウ区画6個体、タニシ区画20個体、オタマジャクシ区画100個体とした。

各生物の撹拌効果を知るために測定した濁度は、ドジョウ区画でのみ対照区画より高い値を示した。各生物の摂食効果を知るために採取した植物プランクトン(フェオフィチン)量は、総量、サイズ組成ともに生物導入の影響は見られなかった。雑草の総乾燥重量は、ドジョウ区画でのみ対照区画より小さくなっていた。雑草の組成(科レベル)のは違いが見られなかった。

これらの結果より、生息密度は小さいながら体サイズの大きいドジョウの攪拌効果のみ顕著であり、ドジョウの行動がもたらした濁度上昇が雑草量の減少をも引き起こしたのではないかと考えられる。ただし、本研究は小面積の区画で行われたこと、短期間で終了せざるをえなかったことなどから、実用化の前にスケール効果を精査する必要がある。


日本生態学会