| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-020 (Poster presentation)

収穫に適したタケノコはどのような場所で採れるのか?〜生態学的にタケノコ採りを科学する〜

*片山昇, 岸田治, 坂井励, 伊藤欣也, 実吉智香子, 浪花愛子, 高橋廣行, 高木健太郎 (北大・北方圏FSC)

山菜は森林から享受される生態系サービスとして古くから人々に愛されてきた。山菜資源を最大限利用するためには、その生産性を決める環境要因を特定するとともに、「山菜採り」などの人為的撹乱に対する山菜の応答について調べる必要がある。このような問題の解決には、基礎生態学で蓄積されてきた知見やアプローチを駆使して山菜採りを研究することが求められるが、山菜採りを生態学的な視点から研究した事例はない。そこで、人為的撹乱に対する山菜の応答について調べ、山菜からの生態系サービスを持続的かつ効率的に活用するための情報をまとめることを最終目標とし研究に着手した。

本研究では山菜としてチシマザサを対象とした。まず基礎データを集めるため、北大天塩研究林内に2x2 mの方形区を69ヵ所設置し、「親ササ林の特性(ササの密度や太さ)」と「タケノコの生産性(数と太さ)」の関係を探った。その結果、(1)親ササが多いほどタケノコが多い、(2)親ササが太いほどタケノコが太い、(3)親ササの密度と親ササの太さには負の関係がある、(4)親ササの密度が中程度の時に収穫に適した太いタケノコの生産数が最も高い、ことが分かった。結果(4)は、親ササが高密度の時には細いタケノコが生産されることによる。つまり、「一本一本の親ササが太く、混み過ぎていない(遷移がそれほど進んでいない)ササ林で、食用の太いタケノコがたくさん収穫できる」ことを示唆する。加えて、一般的なタケノコ採取ではその年に出現するタケノコの74%が採取され、人による採取圧は高いことが分かった。以上の結果から、「タケノコ採取は、ササ林の遷移を逆行させることで、タケノコの生産性に影響する」ことが予測される。


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