| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-027 (Poster presentation)

都市緑地と哺乳類分布の関係:名古屋市と多摩川周辺を例に

*大場真(東農大),李鋭,鈴木孝拓(名大・環境),林希一郎(名大・エコ),圓井悠平,巣山日向子(東農大)

都市緑地とそこに生息する哺乳類についての研究を行うため,名古屋市と多摩川周辺(東京都世田谷区,川崎市多摩区)を研究対象地域として,基礎的なデータの収集を行った。

土地利用条件について1970年代以降のデジタル化された土地利用図と1950年代に出版された土地利用図をデジタル化した。また都市計画などに用いられる現況の緑化図面も入手した。

哺乳類の分布については,文献調査,研究者が収集した情報,ロードキルの記録,現地調査などから位置情報を整備した。現地調査としては,自動シャッター式のセンサーカメラの設置を行い,定点での観測を行った。またアブラコウモリ(Pipistrellus abramus)についてはルートセンサスを実施し,飛翔活動を行っている場所を定期的に記録した。情報源がまちまちであるため,同定のレベルが均一ではないが統計分析等には利用可能なデータを整備したと考えられた。

都市域に中型哺乳類が広く分布しており,特にホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides)は都市域内で広く分布していた。またハクビシン(Paguma larvata)も広く分布していた。

哺乳類の分布と環境条件との関連を見るため,Maxentモデルなどの統計モデルを用いた解析を行った。ホンドタヌキなどは緑地やその連続性とも関係性が高いことが分かった。得られたモデルに過去の土地利用によって分布予測を行うと,過去には生息可能域が連続しており,現状は分断されていることが分かった。アブラコウモリの飛翔活動は,緑地との関係性は低く,採餌にはより細かな微環境に依存していることが分かった。

今後データセットをより大きい範囲に拡大して整備し,都市域での緑地整備,生物多様性オフセットなどに利用可能な分布予測モデルを構築する予定である。


日本生態学会