| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-050 (Poster presentation)

山梨県上野原市における外来種アカボシゴマダラの在来種ゴマダラチョウ・オオムラサキへの影響

*松本祐樹(帝科大 理),森貴久(帝科大)

近年、神奈川県を中心に関東圏で外来種アカボシゴマダラHestina assimilis assimilisが移入し、生息域を急激に広げている。本種は、在来種であるゴマダラチョウHestina persimilis japonicaおよびオオムラサキSasakia charondaと食樹(エノキ)や生活様式が酷似しているため、競合が危惧されている。また、山梨県においてアカボシゴマダラは数例の観察記録しか報告がなく移入状況は明らかにされていない。そこで本研究では、山梨県上野原市における3種の生息数とそれらが利用するエノキのサイズを調べ、アカボシゴマダラが在来種2種へ与える影響と山梨県への移入状況を明らかにした。

本研究では、3種の生息数を明らかにするために(1)樹液に集まるチョウ類の調査、エノキの利用のサイズを明らかにするために(2)2m以下の幼木に生息しているか、(3)2m以上の大木に生息しているか調査した。また移入状況を明らかにするため幼木での調査を2012年と2013年で行い比較検証した。

調査の結果、上野原市においてオオムラサキはアカボシゴマダラに比べて有意に多く生息していたが、ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの生息数には違いはみられなかった。エノキのサイズについては、アカボシゴマダラは幼木のみで観察されたのに対して、他の2種の多くは大木で観察された。年比較では、2013年にはアカボシゴマダラの生息数が有意に増加しており山梨県に生息域を広げていることが示唆された。

この結果から、現時点では上野原市でアカボシゴマダラと在来種2種との競合の可能性は低いが、今後生息数を増加させることで特にゴマダラチョウとの競合の危険が考えられた。


日本生態学会