| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-068 (Poster presentation)

DNA バーコーディングを適用したユスリカ科昆虫の多様性の研究 (3) 種判別を支援するユスリカ標本DNAデータベースの公開

*高村健二, 上野隆平, 今藤夏子, 及川康子, 大林夏湖 (国立環境研・生物生態系)

われわれは、淡水域の主要な生物群であるユスリカ科昆虫について、DNAバーコーディングの基礎となる種固有DNA塩基配列(DNAバーコード)をユスリカ標本DNAデータベースとして公開した。

データベース作成にあたっては、まず、ユスリカの、主として、オス成虫標本をあらたに集めた。過去の収集標本は、必ずしもDNA保存の配慮がされていなかったためである。つぎに、形態学的基準に基づいて種を同定し、同じ標本からDNAを抽出して、DNAバーコードを決定した。対象遺伝子は、ミトコンドリアDNAのCO1(チトクロームcオキシダーゼ1)領域である。DNA抽出の際、形態再観察に備えて、非破壊的抽出手法を採用した。種名・DNA塩基配列と場所・月日等の採集情報を合せて、標本毎の掲載情報とした。採集情報を付けることによって、利用者による他の標本との比較に便宜を図った。

データベースのURLはhttp://www.nies.go.jp/yusurika/index.htmlである。検索システムから分類群・アクセッション番号・採集地等の項目にしたがって、標本情報を抽出できる。公開開始の時点で、43種267標本のデータが掲載されている。掲載データに関する利用規約もサイトも掲載されている。

このDNAバーコードを基準とすれば、従来、オス成虫標本でしか信頼性のある同定ができなかったユスリカの種を、メス成虫・幼虫について高い信頼性のもとに同定できると考えられる。そのことによって、淡水域生態系の指標生物および構成種として注目されてきたユスリカの多様性評価が進展し、淡水域生態系の評価・保全に役立つものと期待される。


日本生態学会