| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-144 (Poster presentation)

アミノ酸安定同位体分析による栄養段階の推定:静岡県佐鳴湖の生態系解析

*戸田三津夫(静岡大院工), 小野田貴光(静岡大院工)

静岡県西部の浜松市にある「佐鳴湖(さなるこ)」は、都市部にある小さな汽水湖である。上流からの淡水量は5万トン/日程度、一方、浜名湖からの潮汐の影響による水の出入りは数十万トン〜100万トン/日に及ぶ。住宅地からの汚濁負荷は湖外に出にくく2001〜2006年は国内湖沼でCODワーストとされた。我々は、これまで佐鳴湖の各生物の安定同位体比をバルク分析法により調査し、食物網構造が生産者(植物プランクトン)、一次消費者(ニホンイサザアミなど)、魚類と大型甲殻類からなることを示唆するデータを得ていた。食物網構造としてはかなり単純で段階数も少なく、これが佐鳴湖の汚濁が解消しづらい原因にもなっている可能性があると思われた。

佐鳴湖にはかつてヤマトシジミも生息していたが、汚濁がひどい時代に消滅した。我々は、市民と恊働してヤマトシジミの復活プロジェクトを展開している。その目的は様々な努力によって近年ワースト10程度(COD 8 ppm程度)まで改善した水質を、ヤマトシジミによりさらによくすることにある。ヤマトシジミには、動物プランクトン同様、一次生産物を上位捕食者に伝達する役割が期待されるが、笠井らの報告で二枚貝の中でも陸生植物依存性が強いとされているものの、ろ過摂食した物質の中で何を利用しているか不明である。そこで我々は、力石らのアミノ酸安定同位体分析の手法を用いてヤマトシジミの栄養段階を決定し、その佐鳴湖での寄与を推定する根拠を得ることを目的に研究を行った。力石らはアミノ酸を誘導体化し超高感度にチューニングしたGC-IRMSを用いているが、我々は通常のIRMSで分析するために、誘導体化ののちにHPLC分画した。発表ではヤマトシジミの栄養段階についてのべ、また、他の佐鳴湖の生物や様々なサンプルの分析データを示してこの方法の妥当性を考察する。


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