| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S02-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

携帯フォトシステム・Web上の写真を利用した生物分布情報の抽出

大野ゆかり(東北大・生命科学)

全国的な生物分布調査には、多くの時間・費用・人員が必要であり、個人の力では困難である。そのため、ビッグデータを用いた生物の分布調査が有効だと考えられるが、現存するビッグデータに調査したい生物の情報が少ない場合がある。これから生物の分布に関するデータを増やすことで、ビッグデータを用いた生物分布調査がさらに現実的になると考えられる。

そのため講演者らは、市民が撮影した写真による生物分布調査方法の確立を目指している。市民が撮影した写真をメールで送ってもらうことで、専門家が写真から種の同定をすることができ、精度の高い情報が得られる。また、写真の場合、撮影日時が記録されていることが多く、GPS機能付きのカメラまたは携帯電話で撮影されたものは、撮影場所の位置情報も記録されている。

市民が撮影した写真による全国的な生物分布調査がどの程度有効なのか、マルハナバチ類をモデルとして、分布調査を行った。マルハナバチ類は野生植物・農作物の重要な送粉者であり、現在、全世界的に減少傾向にある。IUCNは2012年からマルハナバチ類のレッドリストの作成を開始しており、講演者もそれに参加している。富士通の携帯フォト・クラウドシステムを利用して、市民から写真を集めたところ、1000以上のマルハナバチ類の写真を集めることができた。これらの分布情報は、情報が存在しない地域があることや、存在しても調査バイアスを持っている可能性があるため、それらを考慮した解析が必要である。そのため、生物の分布情報と環境要因から生息可能域を推定するMaximum entropy model(Maxent)により、調査バイアスを取り除き、マルハナバチの生息可能域を推定した。講演では、現在開発中のwebの写真を使用した分布調査方法についても、軽く紹介する。


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