| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S06-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

森林の分断化に対する植物個体群と群集の長期的応答

富松裕(山形大・理)

森林の分断化は、森林に生育する植物の生息地を奪うだけでなく、残存する植物相に対しても様々な影響を及ぼす。講演者らは、北海道十勝平野に点在する大きさの異なる断片林を比較することで、森林の分断化が植物個体群や群集に及ぼす影響について研究を行ってきた。これまでの研究から、(1)代表的な林床植物オオバナノエンレイソウでは、小さな林分や林縁に近いほど個体の新規加入が制限されること、(2)小さな林分では過去にオオバナノエンレイソウの個体数が減少した可能性が高いが、現在では個体群が漸近的に安定であると見なせること、(3)小さな林分や林縁に近いほどオオクマザサの密度が高く、森林の分断後にササが分布を拡大したと見られること、(4)森林の群集構造は、林分の大きさや林縁からの距離によって説明できること、(5)1999年から2011年までの12年間では、小さな林分ほど樹木バイオマスの増加量が大きかったことなどが明らかになっている。これらの結果は、エッジ効果が植物個体群や群集の動態における主要な原動力となっていること、森林の分断化が50年以上の長期にわたって森林の動態ひいては蓄積炭素量にも影響を及ぼしうることを示唆している。本講演では、十勝平野における一連の研究や他の先行研究から、森林の分断化に対する植物個体群や群集の長期的応答、ならびに今後の森林管理に対して導くことができる示唆について考える。


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