| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T16-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

ユネスコエコパーク概論

酒井暁子, *松田裕之(横浜国大院・環境情報)

ユネスコエコパークは、企画集会趣旨で述べた目的実現のために、

1)ゾーニング:核心地域(各国の制度により法的に保護される区域)、緩衝地域(人為影響の緩和のために核心地域の周囲に設定され、環境教育等、生態系に負荷をかけない利用を行う区域)、移行地域(居住区を含み、持続可能社会実現のための営みを主に担う区域)の土地区分を行う。

2)3つの機能:保護(自然環境と生物多様性の保護・保全)、開発(持続可能な自然資源の利用と地域の社会経済発展)、学術的支援(調査研究、教育・人材育成)を充実させる。

ゾーニングと機能の関係は、核心地域では保護が、移行地域では開発が重視されるが、例えば人の介入により生物多様性保全が図られる里山は移行地域に含まれるなど、1対1の対応関係ではなく地域全体として理念の実現が求められる。従って近郊に国立公園等があっても都市域を移行地域としての登録は困難であり、逆に開発から取り残されたがために豊かな自然環境を持つ地域に可能性をもたらす。ここで重要なのは、

3)独自性のあるコンセプトと取組み:登録の必然性と地域の魅力を国内外に説明するために、自然、歴史、文化、登録への経緯を踏まえた独自のストーリーを構築する必要がある。運営体制としては、

4)多面的アプローチ:核心地域等の保護制度や地権を持つ国の機関、移行地域の運営を担う地方自治体、生活の営みを通じて制度に参加する地域の産業団体や個人、自然保護や環境教育等に協力するNGO、学術的支援を行う研究教育機関や個人、全体のコーディネートを支援するユネスコ国内委員会と日本MAB計画委員会の連携が必要である。

3、4については日本では各地域の模索を通じて形が見えつつあるが発展途上である。地域間また他制度からの学びや比較分析が有効で、よって以下の講演に続く。


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