| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-13 (Oral presentation)

絶滅危惧植物の減少率と保全効果に関する不確実性に頑健な保全努力の空間配分

*横溝裕行(国環研), 角谷拓(国環研)

植物レッドデータブックの編集のため、約1600種の維管束植物の全国調査が行われた。この調査により得られた個体数とその減少率に関するデータをもとに絶滅リスクの定量化が行われている。しかし将来の個体数を正確に予測するために重要である個体数の減少要因などに関する知見は不足している。また、保全対策を行った場合に個体数の減少をどのくらいの割合で防止できるのかについても不確実性が伴う。そのため、個体数の減少率と保全効果に関する情報の不確実性を考慮して保護区を選定することが求められる。本研究では、情報ギャップ理論を用いて不確実性に頑健な保護区選定を行うための手法を開発した。事例研究として、千葉県における絶滅危惧維管束植物を保全するために、保全努力の最適空間配分を10キロ四方のメッシュ単位で導出した。最良推定値に基づく保全地域と不確実性に頑健な対策地域は異なることが示され、不確実性を考慮する事の重要性を示唆している。不確実性に対処するための方法のひとつとして、様々なシナリオに基づいて絶滅リスクを予測する方法がある。本研究は、シナリオ分析に加えて保全地域を選定する意思決定の際の重要な判断材料になると考えられる。


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