| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-14 (Oral presentation)

南アルプス大井川上流の低位段丘面に成立した植物群落の保全

*増沢武弘,冨田美紀,大嶋達也,徳岡徹(静岡大・理)

南アルプス大井川上流には、東俣と西俣と呼ばれる大きな山岳河川が存在する。この西俣の柳島と東俣の八丁平には低位段丘面と呼ばれる広い平地が存在し、この立地に森林が形成されている。南アルプスの地下にJRリニア新幹線のトンネルと西俣地上部の工区が計画されていて、多くの天然林の改変が想定される。ここでは、工事に伴い、失われる可能性の高い、西俣を中心に自然林の調査を行い、工事終了後に行わなければならない復元に対する指標について考察を行った。

各調査地に調査区を設け、出現する樹木について樹種、胸高円周及び樹高を測定し、さらに各樹木の位置図の作成を行った。

西俣の柳島はカラマツとウラジロモミが優占し、胸高直径約21-30cm、樹高約18-20mの樹木が多く分布していた。樹木の胸高直径は約19-63cmの範囲であった。一方、東俣の八丁平にはサワグルミ、ウラジロモミ、コメツガが優占し、胸高直径は約19-130cmの範囲であり、樹高約30mの大径木が生育するような自然度の高い森林が成立していた。

柳島は工事ヤード及び宿舎を建設するため、皆伐を行い、裸地化した平地となる計画である。南アルプスの特徴である「深い谷」に成立している貴重な低位段丘面の天然林を残すため、また10年後の復元のために「復元指標」を作成した。さらに東俣調査区と西俣の調査区周辺の天然林の特徴及び2014年に認定されたユネスコエコパーク(BR)を考慮して、復元の方向性と可能性について考察した。


日本生態学会