| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A2-32 (Oral presentation)

果実食動物により液果種子散布パターンは異なるか?:小型鳥類と中型哺乳類の比較

*山崎良啓(京大院農), 直江将司(森林総研), 正木隆(森林総研), 井鷺裕司(京大院農)

液果樹木の種子は、多種の果実食動物により散布されることが報告されてきた。哺乳類と鳥類は、多くの液化樹木の主要な種子散布者であるが、その移動パターンや果実選好性などに大きな違いが存在するため、種子散布者としての貢献度も異なることが予想される。本研究では、この予想を検証するために、液果樹木ミズキ(Swida controversa)を対象として、哺乳類と鳥類によるの種子散布パターンの比較を行った。

哺乳類のフン(アナグマおよびタヌキ、2013年)と鳥類のフン(2009‐2013年)内に含まれるミズキ種子を、小川学術参考林(茨城県北茨城市)においてサンプリングした。それらの種子からDNAを抽出し、SSR 6座の遺伝子型を周辺結実木と比較することで、種子散布距離を推定した。また、直接観察(409時間)により、ミズキの種子散布鳥類の特定を行った。

哺乳類による散布種子は、平均散布距離が100 mを超え、プロット外からの長距離散布と推定される種子も多かった。一方で、鳥類による散布種子の多くは、母樹樹冠下の更新不適地に散布されており、平均種子散布距離も短かった。直接観察により、18種(マミチャジナイ、シロハラ、アオバト、など)の鳥類による果実の採食が確認できた。

以上のことより、鳥類に比べ哺乳類による種子散布距離は長いことが明らかになった。哺乳類が、液果樹木の世代更新や遺伝子流動に重要な役割を果たしていることが考えられる。 一方で、鳥類は、多様な種が頻繁に果実を採食しており、散布者として量的に大きく貢献している可能性がある。


日本生態学会