| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A2-34 (Oral presentation)

ジェネラリストのコスト:侵入昆虫ブタクサハムシの新しい食草への急速な適応とそのコスト

*深野祐也(農工大・農), 中山慧(九大・理)

ある食草へ新しく適応した植食性昆虫は、元の食草上での適応度を低下させる。この、食草拡大(=ジェネラリスト化)にコストがあるという考えは、スペシャリストの進化や同所的種分化において重要な仮定である。ジェネラリストのコストに関しては、野外のホストレース間や実験進化させた集団を用いて、古くから検証されてきたが、意外にも支持する例は少ない。本研究では、野外で急速に食草拡大している侵入地のブタクサハムシ(ジェネラリスト集団)と、その祖先の原産地のブタクサハムシ(スペシャリスト集団)を比較することで、現在進行形の、野外で生じているジェネラリスト化のコストを検証した。

ブタクサハムシは、北米から日本に侵入した外来昆虫である。原産地においては、北米原産のブタクサのみを食草とするが、日本においてはブタクサに加えて、北米原産であるオオブタクサも食草としている。これまでの研究によって、日本のハムシは新しい食草であるオオブタクサに対して、生理的な形質(生存率の向上)と行動形質(摂食・産卵の選好性)を、侵入後15年程度で急速に進化させていることがわかっている。そこで、本研究では、オオブタクサへ食草拡大している侵入地のブタクサハムシが、元の食草であるブタクサの利用に関して適応度上のなんらかのコストを負っているのかということを検証した。具体的には、オオブタクサ上での生存率の向上が、元の食草であるブタクサ上での生存率を低下させるのかという点(餌利用のコスト)と、オオブタクサへの選好性が進化することによって、ブタクサを探索する能力が低下するのかという点(餌探索のコスト)を検証した。


日本生態学会